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2026.8.12

#7  小学生で決めた、建築家の道 - 後編 -

邸宅巣箱 | 主宰・建築家 早坂 直貴

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Continuation

前編の続き

幼い頃から建築家を志し、建築文化の本場・フランスで培った感性。そして、鎌倉という土地を選び、その風土や自然と向き合いながら住まいを設計してきた早坂さん。前編では、建築家を目指した原点から、現在の設計思想へとつながる歩みを辿りました。「家だけではなく、その土地での暮らしを設計する」という哲学は、邸宅巣箱の住まいづくりの根幹にあります。後編では、その思想をさらに深く掘り下げます。早坂さんが考える「豊かな住まい」とは何か。自然と共に暮らす価値、素材へのこだわり、そして建築家として描く未来まで。建物を設計するのではなく、暮らしを設計する。その言葉に込められた想いを、ぜひ後編でご覧ください。

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写真:Shin Yamane

第 4 章 暮らしを豊かにする住宅とは

─ 住宅価格が高騰する今、早坂さんは住まいの価値をどのように考えていますか。

住宅は、暮らしを支えるための器です。だからこそ建物だけに価値を求めるのではなく、その外にある景色や自然環境まで含めて設計することが、これからはより大切になると思っています。限られた条件の中でも、お金では買えない価値を住まいに取り込むことで、暮らしの豊かさは大きく変わると思っています。

─ 邸宅巣箱ならではの住まいづくりとは、どのようなものでしょうか。

例えば、崖地や傾斜地、レッドゾーンなど、一般的には敬遠される土地でも、その環境を活かせば唯一無二の住まいになります。建物だけを見るのではなく、その土地が持つ景色や光、風、自然との関係まで設計することで、その場所にしかない価値を生み出せるんです。土地の個性を魅力へと変えることも、建築家の役割だと思っています。

─ お客様との家づくりで、大切にしていることを教えてください。

「ただ住めればいい」という家ではなく、お客様の思い描く暮らしが実現できる家をつくることを大切にしています。だからこそ、最初理想の暮らしをじっくりお話を伺うことから始めます。そして一緒に整理していく。建物を提案する前に、その人らしい暮らしを理解することが、設計の出発点ですね。

─ 早坂さんが考える、究極の住まいとは何でしょうか。

自然との境界を意識しなくていい住まいかもしれません。どこに窓を開けても美しい景色が広がり、光や風をそのまま感じられるような環境。本当に贅沢なのは、高価なものに囲まれることではなく、自然をそのまま暮らしの中に取り込めることだと思っています。

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その土地を活かし、自然に溶け込む家づくり。 写真:Go Nakamura

第 5 章 素材が語る、美しさと時間

─ 素材選びで大切にしていることを教えてください。

できるだけ、人の手仕事や自然の表情が感じられる素材を選ぶようにしています。均一で完璧なものよりも、少しムラがあったり、時間とともに風合いが変化したりする素材のほうが魅力を感じます。完成した瞬間がピークではなく、住み続けることで少しずつ味わいが増していく。そんな素材を積極的に取り入れています。住む人と時間を重ねながら、少しずつ魅力を深めていくものだと思っています。だからこそ、経年変化まで含めて設計することを大切にしています。

─ 一方で、新しい素材も取り入れられますか。

もちろんです。天然素材だけにこだわっているわけではなく、例えば、大きな壁面でもひび割れが起きにくかったり、水まわりでも安心して使用できる素材には、その素材ならではの価値があります。大切なのは、素材そのものではなく、その素材をどう活かすか。自然素材と新しい技術、それぞれの良さを組み合わせながら設計しています。

─ アイデアが行き詰まることはありますか。

もちろんあります。そんな時は、自分の中だけで考え続けるのではなく、もう一度お客様の話を聞きます。「なぜ、その暮らしを望んでいるのか。」その想いを改めて聞いていくと、不思議と答えが見えてくることが多いんです。設計のヒントは、自分の中ではなく、お客様の暮らしの中にあると思っています。

─ 建築家として感性を磨くために、普段から意識していることはありますか。

新しい建築ができれば見に行きますし、海外にも足を運びます。建築だけではなく、ホテルや美術館など、空間そのものを体験することも大切にしています。新しいものを見るたびに刺激を受けますし、それが次の設計につながっていくんです。

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写真:Yusuke Shirai

第 6 章 建築が描く、その先の未来

─ これから挑戦してみたい建築はありますか。

住宅は、建築の基本がすべて詰まっている分野だと思っています。だからこそ、これからも住宅設計は大切に続けていきたいです。その一方で、教会や美術館、図書館のように、多くの人が集まり、時間を過ごす建築にも挑戦してみたいと思っています。住宅で培ってきた「人が心地よく過ごせる空間づくり」を、公共建築にも活かしていきたいですね。

─ 教会は、建築家にとって特別な存在なのでしょうか。

そうですね。教会は、建築家にとって一つの到達点のような存在だと思っています。住宅や商業施設は、人が使うことを前提に設計します。でも教会は少し違います。究極的には、人のためだけではなく、神様へ捧げるための建築です。いわば、クライアントは神様になります。だから求められるのは、機能性だけではありません。空間そのものが、人の心を動かし、祈りや精神性を感じさせる存在であること。建築そのものが哲学や価値観を表現するものになる。だからこそ、教会は建築家にとって特別であり、一つの憧れでもあるんです。

─ 最後に、邸宅巣箱として伝えたいことはありますか。

私たちは、ハイエンド住宅だけを手掛けたいわけではありません。建築が好きな方、自分らしい暮らしを実現したい方、その土地の魅力を活かした住まいをつくりたい方。そんな一人ひとりに寄り添いながら、建築を通して暮らしを豊かにしていきたいと思っています。鎌倉という素晴らしい街で、その人らしい暮らしを実現するお手伝いができれば嬉しいですね。

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写真:Shota Nakayama

Epilogue

最後に

幼い頃から抱き続けた建築への憧れ。フランスで出会った建築文化。そして、鎌倉という土地で磨かれてきた設計思想。早坂さんが一貫して語っていたのは、「建物をつくること」が目的ではないということでした。光や風、自然、素材、そしてその土地に流れる時間までも設計し、一人ひとりの暮らしを豊かにすること。それこそが、邸宅巣箱が目指す建築です。建築とは、人生を支える器であり、ときには文化を育み、人の心を動かす存在。だからこそ早坂さんは、住宅という原点を大切にしながら、その先にある美術館や図書館、そして建築家にとって一つの到達点ともいえる教会へと視線を向けています。「家を設計するのではなく、その土地での暮らしを設計する。」その想いは、これからも鎌倉という街で、一棟一棟の建築を通して未来へと受け継がれていきます。

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邸宅巣箱ファミリーの一員、プンくん。

Profile

プロフィール

邸宅巣箱 主宰・建築家 早坂 直貴 氏

Atelier Tsuyoshi Tane Architects(田根 剛 氏)をはじめ、国内外の設計事務所で10年間にわたりプロジェクトリーダーを務める。 そのうち3年間はパリを拠点に活動し、ヨーロッパ各地の名作建築やデザインに触れながら、クラフトマンシップが息づく建築文化を学ぶ。その経験を通して培われた美学は、現在の設計思想の礎となり、ヨーロッパの美意識と、鎌倉の自然や風土が持つ美徳を融合させた空間づくりを得意とし、これまで40棟を超える住宅設計を手掛ける。土地の個性を読み解き、その場所でしか実現できない豊かな暮らしを提案する住宅設計のスペシャリスト。

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