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2026.8.12

#7  小学生で決めた、建築家の道 - 前編 -

邸宅巣箱 | 主宰・建築家 早坂 直貴

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Prologue

はじめに

鎌倉・逗子・葉山という、この土地ならではの風景と向き合いながら、一棟一棟の住まいを設計する建築設計事務所「邸宅巣箱」。海や山、緑に囲まれた豊かな自然は、この街の大きな魅力である一方、傾斜地や崖地、潮風など、建築には高度な知識と経験が求められる土地でもあります。その環境を制約として捉えるのではなく、その土地だからこそ生まれる豊かな暮らしへと昇華させること。それが、邸宅巣箱の家づくりです。代表を務める早坂 直貴さんは、小学生の頃から建築家を志し、建築文化の本場・フランス・パリで経験を積んだ後、この鎌倉の地で設計活動を続けてきました。芸術性と合理性、そして豊かさを兼ね備えた建築への考え方、素材や時間の経過を大切にする美意識、そして自然と共に暮らすという哲学は、一つひとつの住まいに宿ります。今回のインタビューでは、建築家を志した原点から、フランスで培った価値観、鎌倉という土地だからこそ実現できる住まいづくり、そして邸宅巣箱が描く未来まで、じっくりとお話を伺いました。前編では、早坂さんが建築家を志したきっかけや、現在の設計思想を形づくる原体験についてご紹介します。

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写真:Kentaro Nemoto

第 1 章 建築家を志した原点

─ 建築家を志したきっかけを教えてください。

建築家になろうと決めたのは、小学生の頃です。当時は絵を描くことが得意で、クラスでも一番と言われるくらい上手でした。ただ、子どもながらに、芸術性だけでは社会に求められ続ける仕事にはならないのではないか、という感覚もどこかにありました。だからこそ、表現する面白さと、工学や構造といったエンジニアリングの要素を同時に追求できる仕事を考えたとき、建築家という職業に興味を持ったんです。

─ 小学生から建築家を目指されていたんですね。

そうですね。建築家になると決めてからは、建築学科のある大学へ進学し、そのまま建築の道を歩んできました。ほかの職業を考えたことは、ほとんどありません。ずっと建築家になることを前提に進路を選んできたので、建築家になるのは自然な流れでした。

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パリから古都を目指し、鎌倉へ。

第 2 章 建築の本場、フランス・パリで培った設計思想

─ その後、建築の本場であるフランス・パリへ渡られていますが、その理由を教えてください。

半分はご縁、半分はキャリアアップですね。建築を学ぶ人にとって、フランスは一つの憧れの場所です。料理人が本場のフランス料理を学びに行くように、建築家にとっても建築文化の中心地の一つがフランスなんです。ちょうど研究室の同僚が現地で働いていて、「日本人の設計者を探している」という話をいただいたこともあり、ご縁が重なって渡仏しました。

─ フランスでは、建築家はどういった存在ですか。

フランスでは建築家という職業そのものが、とても尊敬されています。日本より建築家の数も少なく、社会的な地位も高い。そうした環境の中で建築に向き合えたことは、とても大きな経験でした。

─ フランスで建築に触れ、日本との違いをどのように感じましたか。

一番印象的だったのは、造形に対する感覚ですね。ヨーロッパでは、少しラフに仕上げられた壁や、時間の経過によって生まれる風合いまでも「美しさ」として受け入れられています。一方、日本は精度や美しさ、均一性を大切にする文化です。どちらにも魅力がありますが、フランスでは「完璧さ」よりも、その素材や空間が持つ味わいを楽しむ感覚が根付いていました。そうした価値観は、今の私の建築にも大きな影響を与えていると思います。またヨーロッパでは、新しく建てることよりも、今ある建物を活かす文化が根付いています。古い建物ほど価値があり、その歴史を受け継ぎながら使い続けていく。それが当たり前なんです。だから街全体に時間の積み重ねがあり、その土地ならではの景色が自然と守られているように感じました。

─ 日本の建築は、海外でも高く評価されています。早坂さんは、その理由をどのように考えていますか。

日本の建築は、「余白」をつくることがとても上手なんだと思います。壁で囲うのではなく、光や風、空気を取り込むような空間づくり。海外の建築とは表現の仕方は違いますが、その繊細な感覚が世界でも評価されている理由ではないでしょうか。実際に、日本人建築家は世界的な建築賞でも高く評価されていて、日本ならではの美意識や空間のつくり方は、大きな魅力だと感じています。

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パリ郊外のル・ランシーにある建築のイコン、ノートルダム教会。建築家オーギュスト・ペレによって1923年に竣工した、世界初と言われるコンクリート建築。

第 3 章 鎌倉という土地だからこそ生まれる建築

─ 数ある街の中から、鎌倉を選ばれた理由を教えてください。

東京のような都市部ではなく、パリのような古都でもあり、もう少し自然が身近にある場所で建築をしたいと思っていました。鎌倉には昔から文化があり、その街並みや空気感にも惹かれました。最初はそれくらいの理由でしたが、今ではこの土地を選んで本当に良かったと思っています。

─ 建築家として、この土地ならではの魅力はどこにありますか。

都心の住宅は、限られた敷地の中で建物を成立させることが優先されます。一方、鎌倉では庭をつくったり、どの方向に窓を開くかを考えたり、周囲の自然や景色との関係性まで設計できます。家だけで完結するのではなく、外の環境を暮らしの一部として取り込める。それが、このエリアならではの面白さですね。

─ 鎌倉で家を建てる方は、どのような特徴がありますか。

この街に住む方は、建築への関心がとても高いと感じます。「ただ家を建てる」のではなく、「建築家と一緒につくりたい」という考えを持つ方が多いですね。飲食店で例えるなら、チェーン店ではなく、その場所ならではのお店を選ぶような感覚でしょうか。住まいに対しても、自分らしい価値を求める方が多い街だと思います。

─ 邸宅巣箱が、このエリアに特化している理由を教えてください。

私たちは、鎌倉・逗子・葉山・藤沢といった湘南エリアを中心に設計しています。この土地を知り尽くした職人さんや施工会社と長く仕事をすることで、地形や気候、条例などの知識が蓄積されていきます。例えば潮風の影響や傾斜地での施工方法など、この土地だからこそ必要になる経験があります。地域に根差して設計を続けることは、お客様にとっても、より質の高い住まいづくりにつながっていると感じています。

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写真:左 Mina Tabushi 右 Shota Nakayama

Highlight

前編のまとめ

幼い頃に抱いた「芸術と技術を両立させたい」という想いから始まり、建築文化の本場・フランスで培った美意識、そして鎌倉という土地で育まれた設計思想。早坂さんが目指すのは、建物だけをデザインすることではなく、その土地の自然や風景、そこで過ごす時間までを含めた「暮らし」を設計することでした。後編では、早坂さんが考える「豊かな住まい」とは何か、建築家として描く未来、そして邸宅巣箱が目指す住まいづくりについて、さらに深くお話を伺います。

LUX ESSENCE

邸宅巣箱

主宰・建築家 早坂 直貴氏インタビュー

#7  小学生で決めた、建築家の道 - 後編 -

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