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2026.8.15

#9  27歳からの挑戦 - 前編 -

IL NODO | オーナーシェフ 松井 昭憲

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Prologue

はじめに

鎌倉・小町に店を構えるイタリアンレストラン「IL NODO」。2021年から6年連続で、世界的レストランガイド「ゴ・エ・ミヨ」に掲載されるなど、全国から注目を集めるレストランです。店名の「NODO」は、“つなぐ”という意味を持ちます。その名の通り、生産者が育てた食材と、お客様を一皿でつなぐことを大切にしています。料理を手掛ける松井シェフは、毎週のように畑へ足を運び、自ら土を踏み、香りを感じ、生産者と言葉を交わします。なぜなら、本当に美味しい料理は、キッチンだけで生まれるものではないと考えているからです。食材が育つ土地を知り、生産者の苦労や想いを知る。そして、そのすべてを一皿へとつなぐことが料理人の役割だと語ります。今回のインタビューでは、27歳で料理の世界へ飛び込んだ理由から、IL NODOに込めた想い、そして鎌倉の食文化が目指す未来について、お話を伺いました。

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第 1 章 27歳から始まった、料理人への挑戦

─ 料理人を志したきっかけを教えてください。

実は、料理人になるのは少し遅くて、27歳からなんです。大学を卒業してからは一般企業に就職し、建築関係の仕事をしていました。でもずっと、「この仕事じゃない」という気持ちがどこかにありました。学生時代、飲食店でアルバイトをしていた時が一番楽しかったことを思い出して、「料理の世界で生きていきたい」と決意しました。

─ 料理の世界へ飛び込むことに、不安はありませんでしたか。

もちろんありました。専門学校にも通っていませんでしたし、料理人としては本当にゼロからのスタートでした。それでも、「働かせてください」という気持ちだけで、イタリアンレストランを訪ねました。運良く厨房へ入ることができましたが、最初は包丁の持ち方も、プロの仕事も何も分からない状態でしたね。

─ イタリア料理を選んだ理由を教えてください。

最初からイタリア料理を目指していたわけではありません。料理人になりたいという気持ちが先にあって、お店を探していた時に出会ったのが「サバティーニ」でした。お店に入った瞬間、空間や料理、イタリアの文化そのものに惹かれて、「ここで働きたい」と思ったんです。今振り返っても、あの出会いが料理人としての原点だったと思います。

─ 遅いスタートでしたが、料理人として、どのように経験を積まれたのでしょうか。

料理人としては遅いスタートだったので、人より努力するしかないと思っていました。もうそれまでに十分遊んできたので、料理の世界へ入ってからは、本当に料理だけに時間を使っていました。休みの日もレストランへ食べに行ったり、魚屋さんへ行って勉強したり。料理のことを考えない日はなかったですね。そうやって飲食だけに向き合い続けた時間が、今の自分をつくってくれたと思っています。

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第 2 章 料理は、現場から生まれる

─ 料理のアイデアは、どのように生まれるのでしょうか。

まず食材ありきなんです。畑へ行って土を踏み、野菜の香りを感じて、実際に食べてみる。漁港へ行けば、その日に揚がった魚を見る。そうやって現場で感じたことから、「この食材ならこんな料理ができそうだな」というインスピレーションが生まれます。その上で、その日に届く食材を見ながら、「このソースが合いそうだ」「この組み合わせが面白い」と考え、一皿を組み立てていきます。畑も海も自然相手なので、毎日同じものがあるわけではありません。だからこそ、その日その瞬間の食材と向き合いながら、今しかできない料理をつくることを大切にしています。

─ 生産地へ足を運ぶことに、どんな意味がありますか。

食材は、お店に届いた時点で完成しているわけではありません。その野菜がどんな環境で育って、どんな天候を経て、生産者の方がどう向き合ってきたのか。実際に生産地へ足を運ぶと、「今年はこんな出来なんだ」とか、「この野菜はこういう香りなんだ」という発見があるんです。その積み重ねが、料理の表現につながっていくと思っています。

─ 生産者との時間も、大切にされているのでしょうか。

生産者の方々は、僕ら料理人以上に自然と向き合いながら仕事をしています。天候ひとつで収穫が変わることもありますし、台風が来れば、それまで育ててきたものが一度に駄目になってしまうこともある。長くお付き合いしている農家さんもいるので、そういう姿や苦労を近くで見てきました。だからこそ、ただ食材を仕入れるという関係ではなく、お互いに協力しながら一緒に高めていきたいという気持ちがあります。料理人として、生産者の方々の力になれることは何か。そこは、これからもずっと考えながら料理をしていきたいですね。

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第 3 章 IL NODOに込めた想い

─ 「IL NODO(イルノード)」という店名には、どのような想いが込められているのでしょうか。

「NODO」は、「つなぐ」という意味があります。僕は、生産者とお客様をつなぐ存在でありたいと思っています。生産者の方が丹精込めて育てた食材や、その背景にある想いを、料理を通してお客様へ届ける。それが、この店をつくる上で一番大切にしています。

─ 料理とともに、生産者の背景を伝えているんですね。

料理だけを提供するレストランであれば、IL NODOではありません。「この野菜はどんな方が育てたのか」「どんな地域で生まれたのか」、そういう話も一緒に届けたいんです。食材には、それぞれ物語があります。料理を食べるだけではなく、その背景まで知っていただくことで、一皿の価値はもっと深くなると思っています。

─ IL NODOは、どんなレストランでありたいと考えていますか。

繰り返しになりますが、料理を食べる場所というだけではなく、人と人がつながる場所でありたいです。生産者の想いがお客様へ届き、お客様の「美味しかった」という言葉が、また生産者の励みになる。そんな循環が生まれるレストランになったら嬉しいです。料理は、一人では完成しません。たくさんの人の想いが重なって、一皿になるものだと思っています。

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Highlight

前編のまとめ

27歳で料理人の道へ進むという決断から始まり、休みの日も料理に向き合い続けた努力の日々。そして、畑や漁港へ足を運び、自らの五感で食材と向き合うことで、松井シェフならではの料理哲学が育まれていきました。IL NODOに込められた「つなぐ」という想いも、その歩みの中から生まれたものです。生産者の想いを受け取り、その価値を料理としてお客様へ届ける。一皿には、食材だけでなく、その背景にある人の想いまでも表現されています。後編では、松井シェフがなぜ鎌倉という街を選んだのか、そして料理を通してどのような未来を描いているのか。その想いに、さらに深く迫ります。

LUX ESSENCE

IL NODO

オーナーシェフ 松井 昭憲氏インタビュー

#9  27歳からの挑戦 - 後編 -

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